今年のゴールデンウィーク、私は家族や親戚と賑やかな時間を過ごしてきました。
自炊をがんばる一人暮らしの次男を「とにかく食べさせて」送り出したり、地元・栃木で成長した甥っ子に驚いたりと、リフレッシュできた休日でした。
そんな帰省のなかで、特に印象深かった「母との面会」での出来事をお話ししたいと思います。
なかなか目が合わない、もどかしい時間
施設に入っている私の母は、認知症の症状に波がある「まだら」な状態です。
ここ最近は、面会に行ってもずっと目を閉じてしかめっ面をしたまま。声をかけてもなかなか反応がなく、少し寂しい思いをすることもありました。
今回も、車椅子で現れた母はぎゅっと目をつむって眠っています。
そんな母を見て、まめに通っている弟が「肌が乾燥してカサカサなんだよね」と一言。そこで、私が持参したスキンケア用品で、母の顔を整えてあげることにしました。
ひとつのクリームが起こした変化
まずは、さっぱりとしたビオデルマの拭き取り化粧水で顔を拭き取ります。キュウリのような青々とした香りがするものだったのですが、妹と「パック中みたいね」なんて笑いながら、丁寧にケアをしました。
仕上げに塗ったのは、母が昔から愛用していたアロエ入りのクリーム。
手のひらで温めてから、乾燥が気になる部分にそっと伸ばしていきました。
すると、その瞬間です。
ずっと固く目を閉じていた母が、ぱちっと目を開けたのです。
その瞳には、はっきりとした「意志」が宿っていました。
母は私の顔をじっと見て名前を呼び、続いて妹や弟、主人の名前まで次々と言い当てたのです。いつもは間違えがちな甥っ子の名前も、この日は完璧でした。
「女性としての習慣」が脳を呼び覚ます
なぜ、これほどまでに意識が鮮明になったのか。
私は、あの「クリームの香り」が脳のスイッチを入れたのだと感じています。
香りの記憶は、脳にダイレクトに届くと言われます。
特に母にとって、お化粧品を手に取ることは、長年続けてきた「女性として自分を整える」という大切な習慣でした。
あの懐かしい香りが、お化粧をしていた頃のシャキッとした自分を、一瞬で呼び戻してくれたのかもしれません。
介護のヒントに「なじみの香り」を
科学的な理屈はさておき、目の前で母の目が輝き、意志を持って手を振ってくれたことは、私たち兄弟にとって本当に嬉しい出来事でした。
もし介護のなかで「コミュニケーションが難しいな」と感じる場面があれば、その方が昔から親しんでいた「なじみの香り」を試してみるのも一つの手かもしれません。
愛用していた化粧品の匂い
いつも飲んでいたお茶の香り
好きだったお花の香り
そんな些細なきっかけが、心の扉をひらくカギになることがあります。
女性にとって「綺麗に整えること」の力は、私たちが思う以上にパワフルなのかもしれませんね。
皆さんの思い出のなかには、どんな「スイッチ」が眠っていますか?
そんなことをふと思い出しながら、日常を楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、また次回お会いしましょう。